ご挨拶 - 中心研究者 小池 康博

現在のIT社会はシリコンバレーから生まれたエレクトロニクス技術の延長線上に成り立っており、私達の生活に大きな変革をもたらした反面、「小画面とキーボードから抜け出せない」、「高齢者もキーボードに合わせなくてはならない」、「人が技術に合わせなくてはならない」など、近年その限界と綻びも指摘されております。

本プログラムは、私共の研究室から生まれたフォトニクスポリマーテクノロジーの2大成果、すなわち圧倒的なビットレートを有する世界最速の屈折率分布型プラスチック光ファイバー(GI型POF)と、高画質・大画面ディスプレイ用の光機能フィルムの実用化に向けた関連する開発を総合的に進めることにより、高精細リアルタイム映像と大画面ディスプレイがもたらす圧倒的な臨場感の溢れる「Face-to-Faceコミュニケーション産業の創出」につなげることを目指すものであります。
今後4年間の研究開発期間におきましては、GI型POFによる超高速ネットワークを家庭の中に導入し、高画質・大画面ディスプレイの開発と必要な機器や端末の開発から多彩なアプリケーションの開発まで総合的に進め、これら研究開発の成果を誰でも簡単に体感して頂くことができる実証住宅ギガハウスを構築するということにより、かねてより提唱してまいりました「Fiber To The Display」構想を本プログラムで実現してまいりたいと思います。

この研究開発を支える多くの関係者の努力が実を結ぶことによって、例えば高齢者福祉施設に入居しているご老人が離れた家族の自宅と簡単につながり臨場感あふれるFace-to-Faceの対話がいとも簡単にできるなど、現状の小画面・キーボードの世界からは実現できない、まさに人との触れあい、安心・安全の、人にもどる社会の実現に一歩近づくことができるものと確信する次第であります。

2010年4月1日
中心研究者
慶應義塾大学理工学部教授 小池 康博

略 歴
1982年 慶應義塾大学大学院工学研究科博士課程修了
1983~1988年 慶應義塾大学理工学部助手
1988~1992年 慶應義塾大学理工学部専任講師
1989~1990年 米国ベル研究所訪問研究員
1992~1997年 慶應義塾大学理工学部助教授
1997年~現在 慶應義塾大学理工学部教授
2003~2004年 東北大学客員教授
2004~2008年 慶應義塾先端科学技術研究センター所長
2007年~現在 Honorary Doctorate of Eindhoven University of Technology
2009年~現在 Affiliate Professor, Materials Science & Engineering Department,University of Washington
2010年 4月~ 慶應義塾大学フォトニクス・リサーチ・インスティテュート所長